良性発作性頭位めまい症

良性発作性頭位めまい症

2012/10/05更新

 良性発作性頭位めまい症とは、耳石がはがれおちることで起こる耳の病気です。

 

症状

 めまいのうちで最も多いのがこの「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」です。とくに中高年の女性によくみられます。
 起き上がる、寝返り、上や下を向くなど頭の位置を変えた時に、瞬間的にぐるぐると目が回ります。めまいは、数秒〜数十秒で、ひどいときは吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
 特定の頭の位置をとると、めまい発作を繰り返すのが特徴的です。初回は激しいいめまいが起こりますが、次第に体が慣れてくるので、症状が軽減していくことが多いです。
 難聴や耳鳴りを伴うことは一般的にはなく、発作をくり返しながらだんだんと治っていくケースが多いめまいです。”良性”の名のとおり、命にかかわるような病気ではありません。

 

原因

 内耳には身体のバランスを司る三半規管と耳石器(じせきき)があります。三半規管には、体の回転をリンパ液の流れなどで感知して、脳へ伝える機能があります。耳石器には、小さな耳石が沢山乗っていて、体の傾きを脳に伝える機能があります。

 

 良性発作性頭位めまい症は、この耳石が何らかの原因(加齢や外傷など)で耳石器から剥がれ、それが三半規管の中に入ったり、タンパク質などが粒子となり管の中に溜まって、リンパ液の流れが乱れるために起こると考えられています。したがって、いつも同じ向きで寝ていたりすると、起こりやすいと考えられています。

 

 また、中耳炎や頭部の打撲、むち打ち症の経験がある人や、結核でストレプトマイシンの治療を受けた人が、良性発作性頭位めまい症を起こしやすいという報告もあります。毎日同じ向きで寝ていたり、手術後に寝たきりの状態が続いていたりするのも要因となります。

 

めまいの起こり方

 寝返りを打つ、ベッドから起き上がる、物をとるためにかがむなど頭を動かした時、耳石器の耳石が半規管に剥がれ落ちて、前庭神経を刺激したりリンパの流れが乱れると、めまいが起こると考えられています。
 回転性めまい(グルグル回るめまい)浮動性めまい(フワフワするめまい)が起きます。程度には個人差がありますが、数十秒で治まります。吐き気を伴うことはありますが、耳鳴りや難聴は起こりません。
 特定の頭位でめまい発作が繰り返し起こるのが特徴的です。

 

受診

 耳の病気ですので、耳鼻咽喉科で診てもらいましょう。

 

頭位治療

 耳石やタンパク質などの粒子を三半規管の外に移動し、リンパ腺の流れを改善して、めまいを起こりにくくする治療です。
 フレツェル眼鏡をかけた患者さんの目の動きによって浮遊する耳石やタンパク質などの粒子の位置を推測しながら、頭をゆっくりと動かし、耳石などを管から排出します。
 1回の治療で改善する方もいますが、平均2〜3回の治療で改善します。

 

薬物治療

 症状を和らげるために、

 などを服用します。

 

運動による改善

 めまいが続いても、安静にするのではなく、日常生活の中で、積極的に体を動かしたり、ウォーキングやヨガなどの運動をすることも症状の改善につながります。
 簡単に行える次の運動を紹介します。

  1. 片方の腕を前に伸ばし、手を握って親指だけを立てる。
  2. 視点を親指に合わせ、その状態から、顔をゆっくりと左右に20回くらい動かす。
  3. 親指を床と並行にして、視点を親指に合わせ、顔をゆっくりと上下に20回くらい動かす。

 三半規管や脳を刺激して、めまいを起こしにくくします。首や肩のこりもほぐれます。1日に、1〜2セット行うとよいでしょう。

 

この運動の注意点
運動中にめまいが起こっても、転倒しないよう、椅子に座って行う。
高齢者は無理のない回数を。
運動中に激しいめまいが起こる場合は中止するが、軽いめまいであれば続ける。

 

日常生活での注意

 疲れがたまると症状が現れやすいので、十分な休息をとりましょう。
 また、いつも同じ姿勢でいると、三半規管に異物がたまりやすくなるため、良性発作性頭位めまい症を起こしやすくなります。テレビを見ながら横になるときなど、ずっと同じ側を下にしないように、時々姿勢や頭の位置を変えるようにしましょう。寝返りを打ちやすいように寝具を工夫することも大切です。

 

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